話芸
海人草(かいにんそう)
第二次世界大戦後、米軍統治下におかれた沖縄では、与那国島から始まった密貿易で大いに栄えた。有象無象が一攫千金を夢みてひしめくその中に『密貿易の女王』とまで呼ばれ名を馳せた、金城夏子という女性がいたのである。戦争で夫を亡くし、残された子供たちと喘ぐ生活を強いられた女性が多い中、彼女はその容姿からは想像も出来ないほどの男勝りの決断力と行動力で、莫大な財産を築いてゆくのである。
あまりの多忙さゆえに、娘たちに直接愛情を注ぐことが出来ないという、母親としての葛藤を背負いながら、夏子はあの時代に何を考え、それをどう行動に移しながら短い人生を生き抜いたのだろうか・・・。そんな彼女の思いを、当時の時代背景を解説しつつ、海人草売りの少女ハルと夏子との出会いを通して語りすすめてゆく。
参考文献 奥野修司 著『ナツコ 沖縄密貿易の女王』文藝春秋